消さなかったペンキの跡

先日、トイレの入替え工事で、私が生まれ育った大正区平尾へ行きました。
お客さんは、私が生まれる前から、うちの家族と付き合いのあるおじさんです。
コロナ禍以降、顔を合わせるのは久しぶりでした。
その家は鉄骨3階建て。1階が工場で、2階がリビング。私が小学生の頃、父が建てさせてもらった家です。
おじさんは今、すぐそばにあるご実家で暮らしています。この家には普段は誰も住んでいませんが、知人が大阪に来たときに泊まってもらうなど、今も使われています。
設備業者さんがトイレを交換している3時間ほど、私はおじさんとずっと話をしていました。
あいかわらず、私の話をよく聞いてくれます。
その家の窓には、中学生の私が付けてしまったペンキが、今も残っています。家に残る傷や汚れが、誰かにとっては大切な思い出になっていることもある。今回は、そんな話です。
目次
父が怖かった子どもの頃
子どもの頃、私は父が怖かったです。
もちろん、愛情も感じていました。
でも、まぁ昭和の親父です。親父とは「怖いモノ」でした(^^)
そんな私にとって、おじさんの家は居心地のいい場所でした。
金曜日の夜8時になると、「ワールドプロレスリング」を理由におじさんの家へ行き、プロレスを教えてもらいました。
映画に連れて行ってもらったり、勉強を教えてもらったり。
でも一番は、マンガの面白さを教えてくれたことかもしれません。
手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』。
ちばあきおさんの『プレイボール』。
あだち充さんの『ナイン』『陽あたり良好!』『タッチ』『みゆき』。
小林まことさんの『1・2の三四郎』『What's Michael?』。
それから、『プロレススーパースター列伝』。
小学生の私は、おじさんから借りて必死に読んでいました。
父は快く思ってなかったと思いますが(^^)
おじさんは、私の話をよく聴いてくれました。
一時期、雑誌などに記事を書いていたこともあり、「言葉」をよく聞いてくれる人でした。
窓に残ったペンキ
その家の2階のリビング。
窓ガラスの一カ所に、今もペンキが付いています。
実はこれ、私が中学生のときに付けたものです。
当時、父と一緒に、隣の家のトタン屋根を塗る工事を手伝いました。
もちろん、お小遣い目当てのアルバイトです。
おじさんの家の窓ガラスが、ちょうど屋根から見える位置にありました。
そこで私がミスをして、ペンキを付けてしまいました。
シンナーで拭き取れたのですが、おじさんが、
「そのままにしといて」
と言いました。
当時の私は、
「なんで?」
と思いました。
でも、言われたとおり、そのままにしました。
そのペンキが、今も残っています。

今なら、少し分かる気がする
今回、久しぶりにそのペンキを見ました。
柱の傷で昔を思い出す歌がありますよね。あれに似た感じかもしれません。
中学生だった私には、ただの失敗の跡。
でも今見ると、少し違います。
父と一緒に仕事をしていた自分。その様子を見ていたおじさん。
プロレスを見せてもらったこと。マンガを借りたこと。映画に連れて行ってもらったこと。
そして、いつも私の話を聞いてくれたこと。
そんな時間まで、一緒に残っているように思えました。
おじさんが、どういう気持ちであのペンキを残したのか。
聞いたことはありません。
でも今なら、
「あの頃の私を、そこに残しておきたかったのかな」
そんなふうに感じます。
家に残るのは、きれいなものだけじゃない
家の仕事をしていると、傷を直したり、汚れを落としたり、古くなったものを新しくしたりします。
それが私たちの仕事でもあります。
でも、すべての傷や汚れが悪いものではないですよね。
誰かにとっては、ただの傷や汚れ。でも、別の誰かにとっては、残しておきたい思い出なのかもしれません。
今回も、おじさんはあいかわらず私の話を聞いてくれました。
お互い、ずいぶん年齢を重ねました。
でも、話している時間の居心地は、昔と変わっていませんでした。
そして窓には、中学生の私が付けたペンキが、今もそのまま残っています。
直したいところと、残しておきたいもの
ご自宅やご実家のリフォームを考えるときは、「直したいところ」と一緒に、「残しておきたいもの」も、ご家族で話してみてください。
使い慣れた場所や、思い出のある傷。何を残せるかは、建物の状態や安全面、予算なども確認しながら考える必要があります。でも、最初から答えを決めておく必要はありません。
かねしょうでは、どんな工事をするかだけでなく、何を大切にして、これからどんな暮らしをしたいのかから、一緒に整理します。
新築かリフォームか、住み替えか。まだ決まっていない段階でも、まずは今考えていることを聞かせてください。






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