いい工務店は「お客さんを選ぶ」のか
- 卓哉 金城
- 1 日前
- 読了時間: 6分
小さな工務店が棟数を限る、本当の理由【大阪市港区・かねしろ匠舎】
目次
若い頃の私と「一見さんお断り」
京都には「一見さんお断り」というお茶屋や料亭があることを聞いたことがあります。
知ってる人も多いと思うんですが、初めてのお客は、たとえどんな人でも受け入れない——という花街文化です。
若い頃の私は、これを聞いたとき正直「何様やねん」と思ってました。商売やのに、お客を断るって。お客を見た目や懐具合で選ぶんだ。プライド高すぎないか、差別だと。
でも独立し経営を学ぶようになって、改めてこの「一見さんお断りシステム」を調べてみたんです。
そしてわかったのはこれって「断る」のが目的じゃないということでした。

一見さんを断る理由には3つ。
まず1番目は、初めてのお客の好みやニーズがわからず、最高のおもてなしができない。
2番目は、お店の雰囲気をわからない一見客が、常連客に迷惑をかける恐れがある。ご紹介だと振る舞いに気を付ける。
3番目は、花街の支払いは後日という商慣習で、クレジットカードのない時代の「信用」を担保した便利なシステムが成立しない。
初めての出会いを大切にする。常連さんを大切にする。楽しく過ごしてもらう。
どれも理にかなっていて、商売人のすごさを感じました。
「一見さんお断り」の裏にあったのは、実はその人たちへの誠実さやったんですね。
気づいたとき、ちょっと恥ずかしくなりました。「高飛車やな」って思ってたのは、勉強不足の私のほうで。本当は、過去のお客さんへの覚悟の表れやったんですよね。 |
そして私が!4つめに気づいてしまったことをお伝えします!
4番目は——今いるお客を守るために、受け入れる数をあえて絞る、ということ。
一見さんを断るのは「新しいお客さんがいらない」んやなくて、これまで信頼して通い続けてくれた人たちに、変わらず最高のものを届けるための選択やったんです。
新しいお客さんを増やすことより、今いるお客さんを守ること——それがこのシステムの本質やと気づいた瞬間、正直ちょっと鳥肌立ちました。
経営を学んで、気づいたこと
工務店をやっていると、ありがたいことに「もっと広げられるんちゃうか」と思える時期があります。なんか良い仕事の依頼が急に増えて、仕事も順調に進んで調子がいい。もしかしてネット広告やインスタ広告でエリアを広げたら棟数も増やせる。売上も上がる。数字だけ見たら「成長」に見えますよね。「いける!」ってね。でも私が学んだのは、会社やお店の規模には、それに見合った「適正な仕事の量」があるということ。
自分たちが大切にしたいものを守りながら成長することと、ただ規模を拡大することは、全然違う話です。
背丈に合わない成長をしたとき、最初に犠牲になるのは——品質でも納期でもなく、これまでのお客さんとの関係やと思ってます。
新しいお客さんと出会うことはもちろん大切です。でも、それより何より大切にしなあかんのは、これまでに自分を信頼して工事や修理を任せてくれたお客さんやと。
そのお客さんたちがいたからこそ、今の自分の仕事がある。家族が暮らしていける。
規模に合わない成長が、大切なものを壊す。身体も壊す。
4番目をわかりやすくする、ちょっとたとえ話をさせてもらいます。
地元に小さな飲食店が新しくできました。アットホームで、料理もおいしく、値段もお手頃。大将も女将さんも気さくで、バイトの子も元気があって感じがいい。
家族連れや大事なお客さんを連れて行っても安心な「間違いないお店」。地元でも「あそこいい店やで」と常連さんが増えていきました。

そのお店が、あるきっかけで大阪中に知られるようになった。連日、行列ができるようになった。
でもそこから何かが変わった。大将も女将さんも、お客さんとゆっくり話す時間がなくなった。
人手不足を補うバイトに接客マナーを教える暇もなく、ミスの連続。それに怒鳴る声が聞こえるようになった。忙しさに女将さんも体調を崩し、働く人たちの笑顔が無くなり、食材や味を吟味する暇もなく出てくる料理の質や雰囲気が、以前とは別のお店みたいになっていった。
次第に常連さんも来なくなり、そしてある日、そのお店はなくなっていました。
これ、笑えない話で。たくさんのお客に喜んでもらおうと大将と女将さんは純粋に頑張った。でもその思いが叶ったとたんに「大切にしてきたもの」が崩れていく——工務店の世界でも、同じことは起きます。 |
工務店ってバズらなくていい仕事の一つだと思うんですよね。自分たちが建てたり、直したりした家や、選んでくれたお客さんの暮らしを末永く見守る。
これが第一の使命だと思います。
「エリア限定・棟数限定」にしている理由
かねしろ匠舎は、対応エリアを大阪市港区を中心とした車で30分圏内に限定しています。そして新築・大規模リフォームの棟数も、あえて限定しています。
これは、仕事をセーブしたいわけでも、お客さんを選り好みしたいわけでもありません。
これまでに家を建てさせてもらったお客さん、リフォームを任せてもらったお客さんを、ちゃんと守り続けるための選択です。
家は建てて終わりじゃない。10年後、20年後に「ちょっと見てほしい」と連絡をもらったとき「すみません、今は手が回らなくて」とは言いたくない。信頼して任せてくれた人をガッカリさせたくない。
でも、お客様から「ご紹介」頂いた時だけ、エリアを少し緩めています。ご紹介して頂けたのは「信頼」してくれた証ですから。
家は「器」でしかないと思ってます。そこに暮らす人たちが、安心して、安全で、そして幸せでいられること——それが本当のゴールです。そのためには、一棟一棟に全力を注げる規模でいることが大切やと、私は信じています。
「背丈に合った成長をする会社でありたい」——これがうちの考え方です。大きくなることより、任せてくれた人を守り続けることを、これからも選んでいきます。 |
まとめ
「一見さんお断り」は排他的なのではなく、既存のお客さんへの誠実さの表れ
新しいご繁も大切だが、これまで信頼してくれたお客さんを大切にする
規模に合わない成長は、大切にしてきたものを壊すことがある
かねしろ匠舎がエリア・棟数を限るのは、「守り続ける」ための選択
背丈に合った成長をしながら、任せてくれた人の家を一生守っていく
任せてくれたお客さんの家は、うちの家やと思ってます。そのつもりで、ずっと関わり続けたいんです。
かねしろ匠舎へのご相談
かねしろ匠舎は、大阪市港区を中心に車で30分圏内(大阪市全域・周辺市)を対応エリアにしています。2026年の受注棟数は3棟です。残り2棟。
注文住宅・リフォーム・マンションリフォームのご相談はもちろん、「まだ漠然と考えてる段階で…」という方でも全然OKです。一緒に考えるところから始めましょう。





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